SP盤のデジタルファイル化 その2
昨日からSP盤のデジタル化にいそしんでおりますが、本日は組み物を一気に取り込み編集作業をやってみました。・・・これ意外と難しいです(笑)
今回、編集したのはイダ・ヘンデル(Vn)のドヴォルジャークVn協奏曲(DECCA)です。
ご存知の通り、SP盤は一面あたり数分しか収録出来ません。よって、交響曲など数十分を超える曲の場合は5枚組10面などという構成になります。ちなみの今回デジタルファイル化した協奏曲は4枚組8面という構成になっています。1面ずつファイル化する手もありますが、今回は8面を1ファイルに纏めてみました。録音ソフト側で一時停止ボタンを操作して録音のですが、こんな作業、その昔カセットテープにFM放送やレコードを録音して以来ですね(笑) いやあ懐かしい!
前回同様、16bit 48kHzで取り込み、30分弱の録音で345MBのファイルサイズになりました。1分あたり約1MBですね。8面を1ファイルに取り込みましたので、無音部分が7つ出来ることになります。まずはここを編集ソフトを使ってカットして行きます。
wavyというフリーの編集ソフトは非常に使いやすいです。操作マニュアルなど読まなくても直感的に操作出来ます。優れたUIだと思います。オススメの編集ソフトですね。
難しいのはこれからです。4枚組8面ということは当然、曲の途中で切れてしまっているということです。これを上手く繋げなければいけません。流石に楽句の途中で面を切り替える、という酷い盤ではありませんが(そういう酷い盤もたまにあります。エンジニアが音楽のことを知らないか、時間の制約に抗し切れなかったのでしょう)それでも面の終わりがpp(ピアニッシモ)かff(フォルティッシモ)かで繋ぎ方が変わってきます。
ppだったら音が切れた瞬間にバッサリ切ることが出来ます、ところがフォルティッシモですと音の余韻が残っているので、これを残しながら(または残さずに)次の面にどうやって繋げるか、楽譜を見ながらカット&トライで出来るだけ自然に繋がるようにします。ここらへん、その音楽に対するセンスが問われるところですね。当然、私にはそんなセンスはありませんが・・・(笑)
また、盤面の状況によって繋げたところで音質の差が歴然と判ってしまいます。しかも今回編集したDECCA盤はffrr録音ですので、高域にエンファシスがかかっており、盤の最内周と最外周ではかなりの音質差があります。
こうやって2時間ほどかけて編集作業を終え、出来上がった音を全編通して聴いてみると、我ながら上手く出来たところもあれば、全然ダメダメのところもあります。難しいものですね。
でもこの作業、時間を忘れるほど面白いです。夢中になります。まるでキットを製作しているかのような気分を味わえますよ。
私はファイルミュージックに対してある種の偏見を抱いていました。ますます音楽再生が軽薄短小になってしまうと。SP盤などは一曲の交響曲を聴こうと思えば10回は盤面をひっくり返し、針を降ろす作業が必要になるのです。それだけ音楽に対する真摯な思いと行いが無ければ、音楽を再生する喜びも希薄になると思っていました。ですが、今回、自らその音楽ファイル製作に携わり、編集という作業を行って感じたことは、これも充分にクリエイティブな行いであり、音楽に対する深い思いがなければ出来ないことだよな、ということです。
音楽を愛していなければ、誰がこんなメンドクサイ作業を行うでしょう。別に上手く繋げなくたって良いのです。音がちゃんと取れていれば。普通のオーディオマニアならこれで充分でしょう。しかし音楽愛好家はこれでは満足しないでしょう。「音」ではなく「音楽」として流れのあるものにしなければ。デジタルファイルという素材から、試行錯誤しながら流れのある音楽を作ると言う行為は、ひょっとすると音楽愛好家だけに許される特権かも知れませんね(笑)
なんとなくやり方が判って来たので夏にはSV-192A/Dと大容量NASを導入して、SP盤のデジタルライブラリーを増やして行こうと思っています。