ブルックナー 交響曲第5番 マーク/東京都交響楽団
私の中ではブルックナーの5番と言えば、実演、CD共に朝比奈のものがベストでした。今でもその思いは変わらないのですが、今回ご紹介するペーター・マーク指揮東京都交響楽団の演奏は、朝比奈のものとは対極的なアプローチでありながら、この曲の美質を聊かも損なうことなく本質を抉り出したものになっています。
本来であれば、私はこういうテンポが頻繁に入れ替わるようなブルックナーの演奏は毛嫌いするほうです。ですが、マークの演奏は思わず膝を打つ、とでも言いますか、随所に出て来るテンポ・アゴーギグが全てツボに嵌っており、なるほどな~と思わせられます。
似たような演奏で真っ先に思い出すのが、シューリヒトがウィーン・フィルを振った演奏(63年ライブ録音 Altus ALT089)がありますが、マークのものはシューリヒトほど自由奔放ではないものの、大家たちによる従来のブルックナー演奏の呪縛から解き放たれたような、斬新なアプローチと言えるでしょう。
東京都交響楽団の演奏も素晴らしい。マークの棒に必死に食らい付いて行っているのが良く判ります。まさに熱演!
この曲を初めて聴く、と言う方にはオススメし難い演奏ではありますが、斬新で手垢の付いていないアプローチは非常に説得力があります。2枚目、3枚目のチョイスとしては良いかも知れません。
<参考CD>
ブルックナー 交響曲第5番
ペーター・マーク指揮 東京都交響楽団
1986年4月10日 東京文化会館におけるライブ・レコーディング
TOBU RECORDINGS TBRCD0012-2