凍りの掌 シベリア抑留記
どことなく可愛い絵柄とは対照的な、暗く、陰鬱な物語はではありますが、我々の父祖が体験して来たことなのです。全日本人必読の書と言っても過言ではないと思います。
この物語は作者の父君の体験を元にして描かれています。もともとは自費出版されていたそうですが、今回単行本として出版の運びになりました。
第二次大戦後のソビエト軍による日本兵シベリア抑留は他の刊行物でも良く知られております。
零下数十度と云う過酷な環境下での強制労働。
栄養失調や病気でバタバタと死んで行く仲間たち。
収容所内で行われる赤化教育と云う名の洗脳。
それらの実体が赤裸々に綴られております。
少々意外だったのは、これら抑留日本兵が作った施設が未だにシベリアに現存しており、日常的に使われていること。まあ、考えてみれば当たり前のことなのかも知れませんが、戦後60年以上が経過した今でもそれらが現存しているということに感動に似た何かを感じます。
主人公は赤紙で召集された二等兵。決して職業軍人ではありません。名のある将官(誰とは言いませんが)が書いた、自己弁明のような抑留記ではなく、召集令状一枚で市井から借り出された一市民が見たシベリア抑留の実体です。是非、沢山の人に読んで頂きたい良書だと思います。
小池書院 ISBN:978-4862258311