ドヴォルジャーク、ブルッフ ヴァイオリン協奏曲 フィッシャー(Vn) ジンマン/チューリッヒ・トーンハレ
ドヴォルジャーク、ブルッフのヴァイオリン協奏曲と云えば古今の大家が例外なく録音している名曲中の名曲。女流ヴァイオリニストでは古くはイダ・ヘンデルやヨハンナ・マルティのものがありますが、それらと比較しても決してひけをとらないものになっていると思います。
フィッシャー譲が奏でるこの演奏、日向の香りがすると云いますか、洗練されてはいるのですが、どこかに土臭さが感じられ、またホカホカと暖かいものも感じます。演奏を良く聴いていると判るのですが、演奏者が曲を慈しみ、心から共感して弾いているのが良く判ります。
こういう傾向の演奏ですので、ヘンデルやマルティの大向こうを唸らせるような凄味の効いた剛直さは余り感じません。女性ならではの柔らかい感性で情感たっぷりに描き上げているかのように思えます。もともとこの両曲はロマンティックな楽想が横溢する曲ですので、こういう表現は大いに納得出来ます。
両曲とも聴きどころは緩徐楽章です。大げさな表現では決してありませんが、とても心に迫って来ます。
とても優しく、曲を慈しみ、演奏する喜びがダイレクトに伝わってくる内容になっていると思います。
この演奏を聴いた後は、優しく、嬉しい気持ちにさせられます。
是非、沢山の人に聴いて頂きたい演奏だと思います。
書き忘れるところでしたが、ジンマン指揮チューリッヒ・トーンハレ管のツケも素晴らしいです。
ガッシリとした構築感のある演奏で、フィッシャー嬢のヴァイオリンをしっかりサポートしています。
オーケストラの演奏も聴きどころのひとつです。
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<参考CD>
ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲イ短調
ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調
ユリア・フィッシャー(Vn)
デビット・ジンマン指揮
チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団
録音時期:2012年4月19-20日
録音場所:チューリヒ、トーンハレ
DECCA 4783544