余り安易に使いたくない言葉ですが、ヒラリー・ハーンの新譜を耳にする度「天才演奏家」と思ってしまいます。
研ぎ澄まされた感性と完璧なテクニック。切れ味鋭く、グッと我々聴衆の心にダイレクトに迫って来る音は、是も非も無く印象深く残るでしょう。珍奇な表現を用いることは一切なく、どちらかと云うとオーソドックスなスタイルの演奏です。ですが、どんな曲を弾いても「深く広い」のです。これほどまでに深遠さと広大さを感じさせるヴァイオリニストは現代では他に居ないでしょう。
そんなヒラリー・ハーンが26人の作曲家に委嘱した27曲のアンコールピースを収録したCDをリリースしました。
当然、全て現代音楽。クラシックの小品でないところが、如何にもハーンらしいですが、レコード会社も良くこのようなCDのリリースを許可したものです。ハーンの実力と人気があってこその商品化でしょうね。
全て現代音楽ですので、聴き難いものもあれば聴き易いものもあります。好みが分かれるところでしょうが、まずはハーンのヴァイオリンにゆったりと耳を傾けて頂きたいと思います。超絶技巧も不協和音もメロディアスな曲も、フレーズの隅々まで歌い上げていることに気が付かれると思います。
ここがハーンの凄いところ。楽譜を読み解き、自らの思いを込めて歌い上げるなんてことは凡庸な演奏家の能くするところではありません。しかも全て委嘱作なのです。当然、全ての曲についてハーンが初演を務めたのでしょう。そういう意味ではオリジネータの強みと云いますか、全ての曲が自家薬篭中の物になっていると思います。
先述した通り、全てハーンのために書かれた現代曲です。聴き難い、理解し難いものも幾つかあるとは思いますが、必ずやきっとお気に入りの曲も見つかると思います。なんせ27曲も入っているのですから(^^)
<参考CD>
IN 27PIECES:the HILARY HAHN ENCORES
ヒラリー・ハーン(Vn)
コリー・スマイス(p)
録音:2012年5月、2013年2月 ベルリン・テルデックスタジオ
DGG B001910302(2枚組)