モーツァルト・ヴァイオリン協奏曲第5番 ハーン(Vn)ヤルヴィ/ドイツ・カンマーフィル
ハーンの新譜も1年半ぶりぐらいでしょうか?
待望の新譜がモーツァルトとあまり知られていないヴュータンとのカップリングというのもハーンらしい選曲のような気がします。しかし解せないのは、久しぶりの新譜が何故モーツァルトの5番なのか? ハーンのようなヴァイオリニストならもっと他にレコーディングすべき曲があるのではないか? そんな気がしてしまうのです。
個人的にはハーンのヴァイオリンでベルグやコルンゴルド、グラズノフ、プロコフィエフの協奏曲を是非聴いてみたい。勿論、モーツァルトがダメ、と云う訳でなく、こういう曲はもう少し年齢が行ってからでも遅くはない、と思ってしまうのですね。
ですが、聴いてみてわかりました。
ハーンはこれをやりたかったんだ。
なんとなく腑に落ちたような気がします。
このCDはパーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマーフィルとの共演です。
カンマーフィル。。。室内管弦楽団のことですが、ご存知の通り、普通のオーケストラと比べると弦楽器の数がかなり少なくなっています。それ故、透明感が抜群でオーディオ的にいうならソリッドな響きを特色とします。
ハーンはこのドイツ・カンマーフィルの透明な音色に合わせるように、どちらかというと細身な音を乗せて行きます。
ひと昔前のモーツァルト演奏は、どちらかというとふっくらした音で奏でられることが多かったように思います。私はこういう演奏の方が好みなのですが、最近では小編成のオーケストラを使い、またヴィヴラートを少なくし、ソリッドな響きを持って演奏されることが多いように思います。
ドイツ・カンマーフィルはパーヴォ・ヤルヴィと上記のようなアプローチでベートーヴェンの全集を録音したこともあり、新鮮なベートーヴェン像を我々に提示してくれました。
その指揮者とオーケストラとの共演です。手垢にまみれない新しいモーツァルト像を提示したかったのかも知れません。
そのように思って聴くと、なるほどな、と思えるところが幾つかあります。
先述したようにハーンにしては音が細いな、と思えるところが何か所かありますし、冒頭のやや芝居がかった表現など(臭くなる寸前で止めてるところが素晴らしい)非常に表現意欲に富んでいると思えます。
ただ、この表現だとなんだか大人しめで少し面白くありません。
ソリッドな響きのモーツァルト像としては面白いと思いますが、協奏曲ならではスリリングさが物足りない。
で、カップリングのヴュータンでハーンらしく、太い音でガツガツ弾く選曲がなされているのでしょう。
ヴュータンのこの曲は初めて聴きます。
独奏ヴァイオリンの聴かせところが沢山ありますし、劇的な曲想もあって面白い曲ですねえ。
他にも無いかちょっと探してみます。
個人的には大変気に入りました。
いろいろと勝手な憶測を書いていますが、演奏そのものは素晴らしいと思います。
是非一度聴いてみて下さい。
<参考CD>
ヒラリー・ハーン(ヴァイオリン)
ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲 第5番 イ長調 K.219 《トルコ風》
ヴュータン:ヴァイオリン協奏曲 第4番 ニ短調 作品31
録音
2012年12月 ブレーメン(モーツァルト)
2013年8月 シュトゥーア(ヴュータン)
DG Deutsche Grammophon 4793956