scoreのオーディオ&音楽日誌

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カテゴリ:SP盤(クラシック)( 4 )

2つのアリア

ヨハン・セバスチャン・バッハのG線上のアリアという曲をご存知の方は多いと思います。曲名をご存じなくても耳にすれば「ああ、あれね」と思い出されることでしょう。それほどまでにこの曲は我々に馴染み深いものですが、この曲がバッハ作曲の管弦楽組曲第3番の一曲であることをご存知の方はかなりのハッバ通といえるでしょう。

この曲は優しく美しいメロディということもあって世界中の人々に愛されており、古今東西この曲をベースにしていろいろな編曲もなされています。そんな中から今回はチェロ編曲版とヴァイオリン編曲版をご紹介したいと思います。

余談ですが、元々この曲は「G線上のアリア」という曲名ではありません。先述した管弦楽組曲第3番の2曲目「Air(アリア)」です。この曲が“G線上の~”と呼ばれるようになったのは、19世紀の後半にドイツのヴァイオリニスト、アウグスト・ウィルヘルミがニ長調からハ長調に移調させるとヴァイオリンのG線だけで演奏可能なことを発見し、ヴァイオリン独奏用に編曲したのが始まりです。

それではまずはチェロ編曲版から。ご存知カザルスの演奏です。
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恐らく機械吹き込み時代の録音だと思うのですが、確証はありません。聴いているとそんな感じがします。△印ですから30年代以前なのは間違いないです。
当ブログでも何度か書かせて頂きましたが、私はこの演奏に惚れ込んでいます。朴訥なチェロの響き。しかし静かに雄弁に訴えかけて来るものがあります。大きな何か、強いて言えば柔らかく、温かいものに優しく包み込まれるような感じもします。目を閉じて聴いておりますと、南仏かどこかの陽光が差し込むサロンで、パイプを銜え寛ぎながらチェロを弾いているカザルスの姿が見えるような気がします。聴き終わった後は何故か優しい気持ちになったりします。落ち込んだり精神的に不調だったりした時に必ず聴くようにしています。私にとっては究極の癒しの演奏ですね。

次はヴァイオリン編曲版。フーベルマンの演奏です。
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ドイツ語でまんま「G線上のアリア」とあります(笑)
ドイツプレス。戦前のものだと思います。こちらも素晴らしく良い演奏です。G線一本で奏でているからかも知れませんが、これほどまでに素朴なヴァイオリンの音色は聴いたことがありません。静かに胸に響いてくる演奏です。聴き終わったあとは清々しい気持ちにさせられますすね。

こうして2枚の「G線上のアリア」を聞き比べてみますと共通して聴こえてくるのが“素朴な響き”と“静謐さ”です。元々名人芸を聴かせる曲ではないのですが、だからこそ演奏家の人間性(個性)がそのまま音楽となって現れてしまう難しい曲であるとも言えます。古今東西の名人名手が沢山録音を残してくれておりますので、いろいろと聞き比べてみるのも面白いと思います。機会があれば是非お試し下さい。演奏家の個性が見えて面白いですよ!
by score1204 | 2010-10-14 23:39 | SP盤(クラシック) | Trackback | Comments(0)
ドヴォルジャークのユーモレスクという曲をご存知の方は多いと思います。ドヴォルジャークの小品の中でも特にポピュラーな曲だと思うのですが、沢山のヴァイオリニストがこの曲の録音を残してくれており、幾つもの演奏が楽しめます。今回ご紹介するのは、いずれも戦前1920年代の録音で、ゲオルグ・クーレンカンプとフリッツ・クライスラーの演奏です。

まずはクライスラーから
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もう言わずもがなですよね。恐らく20年代の録音だと思います。最内周に打たれている△印の刻印からウェスタン・エレクトリックのカッティングマシンでカッティングされたことが判ります。ちなみにHMVは30年代中盤まで、ウェスタン・エレクトリックのカッティングマシンを使っており、△印の刻印を打って高い印税を払っておりました。HMVが自社のカッティングマシンを使うようになってからは□印を刻印するようになっています。

演奏はクライスラーらしい、とてもジェントルな気品の溢れるものです。甘美な演奏ですね。さぞかし当時の淑女の皆さんはメロメロになったことでしょう(笑)それほどまでに優美で夢見心地にさせられる演奏です。とても表情豊かで、聴いているとセンチメンタルな気分にさせられます。

お次はクーレンカンプ
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刻印から1926年の録音(プレス?)だと判ります。ドイツ・プレス。盤質が違うからだと思いますが、こちらの方がクライスラーのHMV盤よりノイズが少なくて聴きやすいです。レーベルにはドイツ・グラモフォンの印刷が見えますが、後年の黄色いラベルのドイツ・グラモフォンと同じ系列になるのかは判りません(確か同じだった筈です)。演奏はクライスラーのジェントルなものに比べるとヴィオルトーゾチックな、非常に個性豊かな演奏です。こちらも聴き応えがあります。

こうして同時代の名手による演奏を聴き比べてみますと、今では失われてしまった芸の凄みのようなものを感じます。一説によると、当時の演奏家は録音というものを非常に馬鹿にしていて、録音時には普段ではやらない奏法で崩した演奏をすることが多かったらしいです。この説の真偽のほどは判りませんが、仮にそうだったとしてもSP盤に記録された往年の大家の芸が色褪せて聴こえるなんてことはありません。何故ならヴィオルトーゾが遊び心いっぱいに奏でた演奏なのです。悪いはずがありません。ヴィオルトーゾだからこそ許されるお遊びに耳を傾けるのも一興だとは思いませんか?

音色、演奏スタイル、今では失われてしまったこれらの音を現代でも楽しむことが出来るのもSP盤のおかげなんですね。
by score1204 | 2010-10-04 00:53 | SP盤(クラシック) | Trackback | Comments(2)

SP盤の快楽

オーディオの秋ですね~ 空気が冷えて来ると勢いオーディオ機器の鳴りが良くなって来るように感じます。先ほどまでロスロポーヴィチ指揮ワシントン・ナショナル管のショスタコーヴィチ交響曲第11番を聴いていましたが、こんなに良い音のCDだっけ?とびっくりしながら耳を傾けておりました。外はシトシトと雨が降っておりますが、うちのオーディオ達は絶好調のようです(笑)
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とまあ、いつものようにどうでも良いイントロですが、今回のお題はSP盤の話です。

ご覧の通り三種類のディスクがあります。いずれもフルトヴェングラー指揮によるワーグナーの序曲&前奏曲です。一番右端がSP盤、中央がCD、一番左端がLP盤になります。どの音盤にも共通して記録されているのが1938年録音のトリスタンとイゾルデ前奏曲と愛の死です。もちろんSP盤がオリジナル音源。LPとCDが復刻盤になります。この三種を続けて聴きますと、メディアによる音の違いが如実に判ります。

幸いなことにこのSP盤は蓄音機や重針圧の電蓄でかけられた形跡がなく、音溝に一切の荒れがありません。入手時はまるで新品のような輝きを放っておりました。このようなSP盤を現代のSPカートリッジと適正なイコライジングカーブで再生してやりますと、今でも立派に通用するかのような音が出てきます。もちろん現代の録音に比べるとナローではあります。ですが、非常に細かい音まで良く拾っておりますし、演奏者の息遣いまでもが“見える”ような生々しい音には圧倒されます。
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話が前後しますが、SP盤を再生する際に気を付けたいのがイコライジングカーブです。SP盤のカーブはRIAAではありません。ですから、蚤の市などで買い求めたSP盤を通常のフォノイコライザーで再生した場合、ちゃんとした音が出ません。高域が全く伸びず妙にモコモコだったり、低音が肥大化して聞こえたりするのです。SP盤のカーブは大別すると英国系と米国系の二種類あり、前者のTurn Overが250Hz、後者が500Hzになります。これより上はフラットです。ちなみにRIAAはTurn Overが500Hz、Roll Offが2120Hzです。斯様にSP盤のカーブはRIAAとは違っています。これでは正確な音が再現出来るわけがありません。厳密に言うとSP盤のカーブはこの二種類だけではなく、他にも多様なカーブがあるのだそうです。

余談になりますが、このイコライジングカーブが違うってのは結構厄介な問題を孕んでおり、例えば英国原盤の米国プレスなんてSP盤を入手したりします。するとRCA盤であっても英国カーブだったりするのです。逆のパターンもありまして、ヨーロッパのプレスなのに米国カーブなのもあります。日本のSP盤もご他聞に漏れず原盤国のカーブでそのままプレスされています。手元にテイチクがプレスしたワインガルトナー指揮ウィーン・フィルのベートーヴェン第九がありますが、これは紛れも無く英国カーブでした(原盤は英HMV)

完全に話が脱線してしまいました。フルトヴェングラーのワーグナーに話題を戻します。
先述したトリスタンとイゾルデを今度はLP盤で聞きます。決して悪いものではありません。ですがなんと言うのでしょう、音の佇まいが全く異なるのです。雰囲気と言っても良いかも知れません。そう言う物がかなり減殺されてしまっています。そして全く違って来るのが、音の力感です。SP盤に比べると音から力強さが全く無くなってしまうのです。SP盤の78rpmはLP盤の33rpmの二倍以上の回転速度です。物理的にこれだけの運動エネルギーが違うのですから音の力感が違って聞こえるのも、ひょっとしたらあながち間違っていないのではないかと思います。物理エネルギーの違いが音にどのような変化を与えるのかは全く判らないのですけどね(笑)

同じ音源を今度はCDで聴いて見ます。テクノロジーが進歩するに従って音は悪くなります。それの典型的見本が眼前で繰り広げられました。SP盤と比べると音は軽くスカスカです。ベルリン・フィルの重厚な響きや、ワーグナーの毒を含んだ香気が完全に失われてしまっています。残念ながらこれはどんな優秀なD/Aコンバータを使ったところで再現することは不可能なようです(少なくとも当家の環境では無理でした)

結局はSP盤礼賛の記事になってしまうのですが、今や完全に見捨てられてしまったメディアであるSP盤には今でも充分に通用する音が眠っています。それらを復刻したCD等で楽しむのもアリだとは思います。今は随分と良い復刻がなされるようになりましたしね。ですがどんなに頑張ったところで今のデジタルメディアでは再現不可能なものがあります。時代の香気とでも言えば良いのでしょうか?適当な言葉が見つかりませんが、その時代だからこそ出来た演奏や表現、それを十全に味わいつくすためには、その演奏が成された時代のメディアで聴くことがより良い理解に繋がるのだと思います。幾つか当ブログの記事に書きましたが、SP盤やモノラルLPを自分なりのこだわりの再生環境で聞くことで往年の大演奏家を再発見出来ました。これらの経験からそんなことをつらつら思っています。

なんか上手くまとまりませんが・・・(苦笑)
by score1204 | 2010-09-27 23:50 | SP盤(クラシック) | Trackback | Comments(6)

初めて見た!

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これ何に見えます? むかし流行ったカラーLP? そういうふうに見えますよね。ですがこれカラーのSP盤なんです。写真のSP盤はアメリカColumbia盤ですが、恐らく原盤はHMVあたりで40~50年代のプレスだと思います。

SP盤の再生に取り組むようになってから10年近くが経ちますが、こういうのは初めて見ました。いつの時代でも考えることは一緒なんですね。肝心の音の方ですが、普通のシェラック盤と殆んど変わらないように思います。ひょっとするとビニール盤かも知れませんが、質感はシェラック盤のように思います。

写真のSP盤はフーベルマンのバッハ/ヴァイオリン協奏曲第1番です。オケはウィーン・フィル。恐らく1930年代初期の録音だと思います。古色蒼然としたウィーン・フィルの響きとフーベルマンの味わい深いヴァイオリンが楽しめます。オケは今と比べるとかなり大きな編成であることが判ります。かなり分厚い響きです。メンゲルベルクのマタイをお聴きになられた方はご存知でしょうが、この頃はバッハだから小編成(しかもピリオド奏法で)演るなんていう文化が無いのですね。私は今の響きの薄いバッハよりもこういう大編成の演奏が好みです。
by score1204 | 2010-09-20 20:50 | SP盤(クラシック) | Trackback | Comments(0)

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