CD VS 非圧縮シングルレイヤーSACD
一般的に販売されているSACDはCD層とSACD層を一枚のディスクにパッケージングした所謂「ハイブリッド盤」と呼称されるものが殆どです。ですがハイブリッド盤のSACD層はDST(Direct Stream Transfer)で圧縮がかけられています。これに対し非圧縮シングルレイヤーというのはDSD方式で作成されたマスターを文字通り、圧縮せずに収録されております。・・・て書いてて私も何のこっちゃさっぱり判りません(笑) 要は非圧縮シングルレイヤーの方がデータを解凍するプロセスを省くことが出来るので音が良いということなんでしょう・・・多分(爆)
試聴したのはこれ。ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルのショスタコーヴィチ交響曲第5番。東京ライブです。
上が従来のCD。下が今回発売になったSACD非圧縮シングルレイヤー盤です。
勿論、元になったアナログ・オリジナルマスターは同一のものです。よって演奏日も内容も全く同じです。
さて、早速試聴です。
あ、その前に当家のSACDプレーヤーはDENON SA11。CD再生環境はCEC TL3N、SV-192S、MUTEC MC-3です。試聴に使ったプリはSV-310。パワーアンプはSV-38T。スピーカーはオートグラフ。スーパーツィーターのSUONOはSV-23Dでドライブしています。プリ以下は両ディスク共に共通です。
いや、これは・・・非圧縮SACDが齎す空気感は凄いです。まるで演奏会場が目の前に現れたような迫真性です。怜悧かつ鋭利な刃物のようなレニングラード・フィルの一糸乱れぬアンサンブル。ムラヴィンスキーの芸の凄みがビンビン伝わって来ます。特筆すべきはダイナミックレンジの広さ。最弱音から最強音の振幅が大きく、演奏会場の空気が揺れているのが判ります。ただ若干ですが、高域のヒリツキのようなものを感じます。スーパーツィーターが出過ぎているのかな、と思いボリュームを絞ってもヒリツキ感は取れませんでした。全体的な音調としては煌びやかで陰影感や色彩感がハッキリしているように思います。
対してCD。いつも聴いている音ですので、やはりこちらの方が個人的には落ち着きます。MC-3の恩恵にあずかっているとは言え、空間を表出する能力は非圧縮SACDに軍配が上がります。ですが音の滑らかさ、落ち着いた表現と言う部分においては圧倒的にCDが良いです。これはTL3Nの威力の賜物だと思います。こちらはSACDで感じた高域のヒリツキは全く感じません。全体的にしっとりと落ち着いた音の佇まいです。
試しにCDをDENON SA11で聴いてみます。TL3Nとはまた違った世界です。非圧縮SACDで聴こえた空気感も良く出ています。しかし、やはりCD。ダイナミックレンジの広さはSACDとは比べ物になりません。
予定調和的ですが、こうして聞くとそれぞれに一長一短あり、どちらが良いとは一概に言えないところがあります。素晴らしい空気感とダイナミックレンジの非圧縮SACDか。それとも音の滑らかなCDか。一階席最前列で聴くか、天井桟敷で聴くかの違いと言って良いかも知れません。その音楽と演奏に何を求めるかによってチョイスしても良いのかも知れませんね。
<参考CD&SACD>
ショスタコーヴィチ 交響曲第5番
エフゲニー・ムラインスキー指揮
レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団
1973年5月26日 東京文化会館におけるライブレコーディング
CD Altus ALT-002
SACD Altus ALTSA002