シューマン 交響曲第4番 クナッパーツブッシュ/ウィーン・フィル
これまで同曲の私的ベスト盤と云えばフルトヴェングラー/ベルリン・フィル、もしくはアーベントロート/ゲヴァントハウスのものでした(どちらもモノラルなのはご愛嬌)しかし、このクナッパーツブッシュのものは、そのどちらをも遙かに上回る素晴らしい演奏になっていると思います。まさに驚天動地、他の追随を許さない個性的な名演です。
1962年のモノラル録音で決して万人にオススメ出来るものではありません。ですが、当時のモノラル録音(しかもライブ収録)にも関わらず、音質は非常に良好。今では失われてしまったオーストリアのローカルオーケストラであったウィーン・フィルの個性的な響きも楽しめます。
聴衆の拍手が終わらないうちに演奏が始まります。この第一楽章冒頭の響きがまたこの世のものとは思えないほど深々と響きます。一瞬にして心は19世紀のドイツ・ロマンティシズムの世界へ(笑)
シューマンはあまりオーケストレーションが得意では無く、モノクロームな響きになりがちですが、クナッパーツブッシュはオケのバランスを変えることによって様々な色を付けて行きます。これには成る程、と膝を打ちますね。金管を強奏させたり、ヴァイオリンを浮かび上がらせたり、手練手管を講じて行きますが、どれもが作為的ではなく非常に自然な表現になっています。
全編を通じて非常にゆったりしたテンポ。ただし、むやみに遅い訳ではなく、あらゆるフレーズの隅々まで歌い上げています。まるで老境に差し掛かった個性的な名優の一人芝居を観ているような演奏です。
圧倒的な演奏だと思います。ご興味のある方は是非!
カップリングのR・シュトラウス作曲交響詩「死と変容」もゴツゴツとした響きの巨大な岩塊を思わせるような演奏です。こちらも素晴らしい!
<参考CD>
R・シュトラウス:交響詩「死と変容」
シューマン:交響曲第4番
ハンス・クナッパーツブッシュ指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
1962年12月16日 ウィーン・ムジークフェラインにおけるライブ録音(モノラル)
Altus ALT224